製品知識
信頼性

電源の信頼性は一般的に故障率、MTBF、寿命、各種信頼性試験データで表されます。

(1)故障率

故障率の時間的推移を表すものとして、バスタブカーブがよく知られています。

図 8.1 バスタブカーブ

運転直後の短い時間に部品などの欠陥による故障率の高い期間があり、初期故障期間といいます。
部品の信頼性が悪かった時代には、エージング(バーンイン)で初期故障を取り除くことは有効でしたが、部品の信頼性や製作工程の品質が上がってくると共に、数日間と言う短時間のエージングで発見できる初期不良は無くなりつつあります。
偶発故障期間はランダムに故障が発生する期間で、これも設計、製作工程、部品の信頼性が上がり、年々故障率が下がっています。
部品の寿命がくると摩耗故障期間になります。
一般に、単に故障率をいう場合は偶発故障期間のことをいいます。
電源の故障率の算出方法としては、あらかじめ設定された部品の故障率を積算してだす方法と、実際のフィールドでの実績から出す方法があります。
前者の場合MIL-HDBK217の部品のディレーティング率を考慮しない部品点数法と、部品1点1点の使い方がファクターとして入るストレス法を使うのが一般的です。
部品点数法を使う場合はMIL-HDBK217に準じて制定された、EIAJ規格(RCR-9102)を使用しています。

(2)MTBF(平均故障間隔)Mean Time Between Failure

同一の電源の故障から次の故障までの平均値をいいます。
故障率の逆数をとって計算します。

MTBF(平均故障間隔)の計算式

(3)寿命

  1. 電源の期待寿命
    ユニット電源の期待寿命は、電源内部に使用しているアルミ電解コンデンサの寿命に依存します。
    また、強制空冷電源(ファン内蔵)の場合は、アルミ電解コンデンサ、及びファンの寿命に依存し、両者のうち期待寿命の短い方を電源の期待寿命としています。
    ファンを内蔵していない基板単体タイプ電源の期待寿命は、使用しているアルミ電解コンデンサの推定寿命に依存します。
  2. 電解コンデンサの推定寿命
    電解コンデンサの推定寿命は余剰電解液の量と電解液が封口ゴムを通過して蒸発するスピード(封口ゴムの材質封口構造で決まる)、そしてそのスピードを決定する温度で決まります。従って寿命は、電解コンデンサそのものの設計で決まる基本寿命と、使用環境による電解コンデンサの温度で決定されます。

    電解コンデンサの寿命の計算式

    ※上記の推定寿命式で計算された結果は保証値ではありませんのでご注意ください。

    コンデンサの使用温度は年間平均温度で考えてください。
    以上の説明から分かるように、コンデンサの使用温度を下げれば、電解の寿命は長くなることが分かります。
    コンデンサの使用温度を下げるには、電源の冷却を確実に行うことと、負荷をディレーティングして電源の温度上昇を抑えることが有効です。

  3. ファンの期待寿命
    ファンの期待寿命は温度環境以外に湿度やほこりの影響を受けやすく、寿命を短くする要因となります。ほこりの多い場所で使用する場合は、ファンの冷却効果が低下しないようエアフィルタを設けてください。なお、ファンの期待寿命からファンの定期的な交換をお願いします。

(4)信頼性試験

フィールドでの電源の故障あるいは寿命を予測、確認するため、信頼性試験があります。
ただし、どうしても加速性試験に頼らざるを得ないため、フィールドでの状況と試験の整合性がなかなか取れず、過去の経験を入れての判断が必要です。
電源の信頼性試験の方法には次のようなものがあり、その電源の特性に合わせて実施しています。

  1. 高温放置試験

    高温環境で長時間放置して電源に異常がないかどうか試験します。
    通電、無通電があり、温度、時間をファクターにして行います。
  2. 温度サイクル試験

    周囲温度をゆっくり規定の範囲上下し、規定のサイクル数実施した後、電源に異常がないかどうか試験します。
  3. 熱衝撃試験

    周囲温度を規定の範囲で急激に変化させ、規定のサイクル数実施した後、電源に異常がないかどうか試験します。
  4. THB試験

    高温、高湿の環境で長時間通電して電源に異常がないかどうか試験します。
  5. プレッシャークッカー試験

    高温、高湿、高圧の環境で長時間放置して電源に異常がないかどうか試験します。
  6. 長期通電試験

    最高使用温度で全負荷とし長時間の通電を行い、寿命の確認を行う試験です。
  7. 振動試験

  8. 衝撃試験

(5)環境

一般的な電源はMIL規格でいうところの地上、温和で設計されています。
従って、次のような環境でのご使用はそれなりの対策を行った上で、使用してください。

  1. 周囲温度

    ディレーティングカーブで示す温度まで使用できますが、期待寿命との関係を考慮してください。
    24時間高温環境で全負荷にて連続運転すると、電解コンデンサを使用している電源は、2万から4万時間となります。
    従って、この場合はファンによる強制空冷か出力をさらにディレーティングしてご使用ください。
    ただし、電解コンデンサを使用していても、テフロン封口のコンデンサを使用しているものはこの限りではありません。
    このようなご使用方法を取らざるを得ないときは、いくつかの部品温度を計測し寿命推定できますので、弊社に連絡ください。
    また、一般的に温度が高くなると化学反応速度が促進されることから、ディレーティングカーブ内でも高温となる状態での長時間の使用は電源の信頼性に影響を与えることがあります。そのため、高信頼性が要求される装置での使用や長時間連続動作するような使用方法の場合、周囲温度および測定ポイント温度をさらにディレーティングしてご使用いただくことを推奨します。
    デバイスの信頼性における温度影響の一例として、以下にTelcordia SR-332※によるアナログICの推定故障率曲線を示します。
    以下に示すとおり、温度を低減することで信頼性が向上します。
    ※Bell Communication Researchが公開しているデバイス信頼度予測手法

    図 8.2 推定故障率曲線

    図 8.2 推定故障率曲線
  2. ガス

    硫化水素、亜硫酸ガス、塩素ガスなど腐食性のガスが発生する雰囲気では、電源の回路パターンや抵抗器などの部品がオープンまたはショートし、電源に障害が出ることがあります。
    水道水を利用して加湿器などを使う雰囲気では水道水に含まれている、塩素イオンによって同様のことが起こります。

  3. 液体

    導電性のある液体などが電源にかからないよう電源の配置や方向に配慮してください。

  4. ほこり

    電源にほこりが付着すると放熱が悪くなり、故障したり、寿命を縮めますので、フィルターなどを設置するなどほこりがつかないよう配慮してください。
    環境によっては導電性の金属やカーボンの繊維や粉が浮遊しているところもあります。
    強制空冷の電源には特に注意が必要です。
    また、ほこりがたまったところに水分が付くと、マイグレーションが起こったり、そこに導電性のイオンが作用して回路をショートさせますので使用環境をよく考慮してご使用ください。

    bからdの問題に対してマイナーチェンジ品として、コーティング処理を施した電源も用意しております。
    ただし、悪環境ではコーティング処理をしてもこれらの問題が無くなるわけではなく、故障率を下げるとか、寿命を延ばす程度ですので、最終的にはメンテナンスで信頼性を確保することを考慮してください。



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