製品知識
高調波電流抑制・力率改善

電子機器の普及によって、商用電源をコンデンサインプット型で整流するものや位相制御するもの、蛍光灯などの放電を利用するものが増え、商用電源ラインには多量の歪み波電流が流れるようになってきています。
トランスやコンデンサなどの発電、配電機器は50-60サイクルで設計されており、これに歪み波電流が流れることによって50-60サイクルの整数倍の周波数の電流が流れ機器の損失が増加します。
このため発電、配電機器が故障したり、発電、配電機器の定格出力が取り出せず、むだなエネルギーを浪費し不必要な発電所をいくつも運転していることになり、社会問題となっています。

(1)高調波電流の発生

理想的な正弦波は一つの周波数成分しかありませんし、理想的な矩形波は直流から無限大の周波数成分までを含んでいます。
これらの中間となる歪み波は、基本波から波に含まれている最大周波数まで集合したものになります。
スイッチング電源に流れ込む電流はコンデンサインプットで整流しているため歪み波電流となり、基本波である50/60Hzからその整数倍の周波数成分を含み高い周波数成分まで含んでいます。

図 7.1 電圧、電流波形と周波数スペクトル

正弦波電流の流れる機器において、力率は電圧と電流の位相差表しますが、位相差のないものについては歪み波電流が流れると、皮相電力と有効電力が別の値を示しそこに力率が存在します。
従って、高調波電流抑制をすることは力率改善になります。

(2)高調波電流抑制の方法

入力に流れる電流を正弦波に近づけるために主に使われている方法を紹介します。

  1. 昇圧コンバータ方式

    全波整流波形を専用の昇圧コンバータを使って平滑コンデンサの電圧に昇圧する回路です。
    大電力のスイッチング電源に使用されます。

    図 7.2 昇圧コンバータ方式

  2. ディザー方式

    前述の昇圧コンバータと電源のコンバータのスイッチを共用した回路で、小出力の電源に使用されています。

    図 7.3 ディザー方式

(3)高調波電流抑制の規格

高調波電流抑制については、IECを中心に国際的に検討が進められており、1982年にIEC555-2の制定以降、現在では、IEC61000-3-2へと規格が変更となっております。
ヨーロッパではEN61000-3-2:2000/A2:2005が発行され、2005年9月1日から適用されています。

機器のクラス分け

EN61000-3-2:2000/A2:2005による機器のクラス分けは以下のとおりとなります。

クラスA 平衡三相機器、家庭用器具(クラスDの機器を除く)、工具(ポータブル工具を除く)、白熱ランプ用調光器、オーディオ機器、他の3つのクラスに規定されない機器
クラスB ポータブル型工具、汎用アーク溶接機器
クラスC 照明装置
クラスD 消費電力600W以下の次の機器
  • パーソナルコンピュータ及びそのモニター
  • テレビ受信機

各クラスの限度値

表の値は、入力電圧が230Vの時の値を示します。
これ以外の入力電圧の時は、入力電圧に反比例した値となります。

表 7.1 クラスA限度値
順番 高調波次数
n
最大許容高調波電流
[A]
奇数高調波
1 3 2.30
2 5 1.14
3 7 0.77
4 9 0.40
5 11 0.33
6 13 0.21
7 15≦n≦39 0.15×15/n
偶数高調波
1 2 1.08
2 4 0.43
3 6 0.30
4 8≦n≦40 0.23×8/n

※クラスBはクラスAの1.5倍

表 7.2 クラスC限度値
順番 高調波次数
n
照明装置の基本波入力
電流の百分率として
表わされる最大値
[%]
奇数高調波
1 3 30×λ ※1
2 5 10
3 7 7
4 9 5
5 11≦n≦39 3
偶数高調波
1 2 2

※1 λは回路の力率

表 7.3 クラスD限度値(600W以下)
順番 高調波次数
n
電力比例限度値
[mA/W]
最大許容高調波電流
[A]
1 3 3.4 2.30
2 5 1.9 1.14
3 7 1.0 0.77
4 9 0.5 0.40
5 11 0.35 0.33
6 13≦n≦39 3.85/n クラスAと同じ

限度値を適用しない機器

  • 照明装置以外の75Wまたは未満の定格電力の機器
    (将来的に75Wから50Wへ引き下げられる予定)
  • 総定格電力が1KW以上の専用機器
  • 定格電力が200W以下の対称制御による発熱体
  • 定格電力が1KWまでの白熱ランプ用の各調光器

国内の高調波規制動向

日本では、1994年に「家電・汎用品高調波対策ガイドライン」発行され、自主規制が始まりました。
また、2003年12月20日には、JIS C 61000-3-2:第1版「高調波電流発生限度値(1相当たりの入力電流が20A以下の機器)」が発行されました。2004年9月6日にはガイドラインが廃止となり、JIS C 61000-3-2へ統一されました。2005年3月20日にはJIS C 61000-3-2:2005が発行され、IEC規格との整合が図られています。

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