製品知識
EMC試験

(1)CEマーキングについて

EU圏内にて販売する機械や電気製品に対しては、安全や品質管理、環境破壊防止に適合していることを目的にCEマーキングを表示する義務がありますが、このCEマーキング表示には該当するEC指令に適合する必要があります。EC指令の中でも、一般的な機械製品に適用される 項目(指令)を以下に示します。

  1. 機械指令

    部品の集合体で稼動部がある製品が対象となります(産業機器が中心)。

  2. EMC指令

    電波障害を発生するとみなされる電気・電子部品を有する機器及び電磁妨害により影響を受ける機器を対象としており、エミッション(EMI)とイミュニティ(EMS)の2つの項目が要求されます。

  3. 低電圧指令

    定格電圧がAC50-1000V、又はDC75V-1500Vの範囲で駆動する製品が対象となります。

    ノイズフィルタ単体では上記に示した指令を含め該当するEC指令がない事から、製品にCEマーキングの表示はできません。

    なお、当社AC入力タイプのノイズフィルタはEU圏内などへの製品流通を可能にするENECを取得し、製品に表示しております。
    ENECを取得した部品は加盟国間内で申請手続きを必要としないため、流通する国ごとの認証が不要であり、自由に流通させる事ができます。

(2)雑音端子電圧EN61000-6-4

伝導性エミッション(Conducted emission)

機器から電源ケーブルを通して外部へ伝わる妨害波の電圧をオープンサイトまたは電波暗室LISNを使用して測定します。

図 5.2.1 雑音端子電圧測定配置例

:用語説明資料に記載あり

(3)放射電界強度EN61000-6-4

放射電磁界エミッション(Radiated emission)

機器を動作させた際、機器から3[m]または10[m]離れた場所における電磁波の強度を規定周波数範囲で測定します。

図 5.3.1 放射電界強度測定配置例

(4)電源高調波電流EN61000-3-2

限度値-高調波電流エミッション限度値(Limits-limits for harmonic current emissions)

入力電流を周波数分析し、それぞれの次数の高調波電流の値を確認します。

(5)静電気放電EN61000-4-2

静電気放電イミュ二ティ試験(Electrostatic discharge immunity test)

静電気放電の影響(誤動作や半導体素子の破壊)を模擬するもので、接触放電と気中放電が適用されます。

図 5.5.1 放電電流波形

表 5.5.1 印加レベル
レベル 指示電圧 最初の放置
ピーク電流
(±10%)Ip
立上り時間 30nsでの
電流値
(±30%)
60nsでの
電流値
(±30%)
1 2kV 7.5A 0.7~1ns 4A 2A
2 4kV 15A 0.7~1ns 8A 4A
3 6kV 22.5A 0.7~1ns 12A 6A
4 8kV 30A 0.7~1ns 16A 8A

(6)無線周波数放射電磁界EN61000-4-3

放射、無線周波数、電磁界イミュニティ(Radiated, radiofrequency, electromagnetic field immunity test)

機器が電磁波にさらされた時、その影響を受けた場合のイミュニティを確認します。

(7)ファーストトランジェント/バーストEN61000-4-4

電気的ファーストトランジェント/バースト イミュニティ試験(Electrical fast transient/burst immunity test)

接点での放電で発生するようなエッジをもつパルスのバースト波をケーブルに注入しイミュニティを確認します。

(8)サージEN61000-4-5

サージイミュニティ試験(Surge immunity test)

規定のサージを注入し、サージに対するイミュニティを確認します。

図 5.8.1 電圧サージ波形の例

表 5.8.1 レベル
レベル 開回路試験電圧 ±10%[kV]
1 0.5
2 1.0
3 2.0
4 4.0
X special

(9)無線周波数伝導妨害EN61000-4-6

無線周波数で誘導された伝導妨害に対するイミュニティ(Immunity to conducted disturbances, induced by radio frequency fields)

電磁波がケーブルを通って機器に入ることによるイミュニティを確認します。

(10)商用周波数磁界EN61000-4-8

商用周波数磁界不活性態試験(Power frequency magnetic field immunity test)

入力線や動力配線を流れる商用周波数電流により発生した磁界に対するイミュニティを確認します。

(11)電圧ディップ/瞬停EN61000-4-11

電圧ディップ、停電及び電圧変動イミュニティ試験(Voltage dips, short interruptions and voltage variations immunity tests)

短時間の電圧低下や電圧が0になる停電のあと、装置が正常な動作をすることを確認します。

図 5.11.1 電圧ディップ波形の例

(12)ノイズの単位

1[μV]を基準とし、[dB]表示します。
1[μV]を0[dBμV]とします。
例えば、1[V]は

(13)検波方式

  1. 尖頭値検波(PK:Peak)

    検波出力波形のピークの高さを検出します。

  2. 準尖頭値検波(QP:Quase Peak)

    充放電時の時定数を持った回路を通し検出します。
    準尖頭値は、尖頭値と平均値の中間的な値になります。
    ノイズの持続時間が長いか頻度が高い時に測定結果が高くなる検波方法です。

  3. 平均値検波(AV:Average)

    検波出力の平均を検出します。

    図 5.13.1 検波方式と測定レベルの関係

(14)雑音端子電圧、放射電界強度の限度値(抜粋)

試験項目 規格 EN61000-6-3 EN61000-6-4 EN55011 EN55022 EN60601-1-2 EN50370-1
グループ1
分類 共通規格 共通規格 製品群規格 製品群規格 製品群規格 製品群規格
製品 ISM機器 情報処理装置(ITE機器) ISM機器
(医療機)
工作機械
20kVA以下 20kVA超 20kVA以下 20kVA超 16A
以下
16A
使用環境 Class
B
Class
A
Class
B
Class
A
Class
B
Class
A
Class
B
Class
A
Class
A

レベル:単位[dBμV]

雑音端子電圧 限度値 QP 0.15~
0.5MHz
66

56
7966

56
7910066

56
7966

56
7910079100
0.5~
5MHz
567356738656735673867386
5~
30MHz
6073607390

73
6073607390

73
6090

70
AV 0.15~
0.5MHz
56

46
6656

46
669056

46
6656

46
66906690
0.5~
5MHz
466046607646604660766076
5~
30MHz
5060506080

60
5060506080

60
6080

60

レベル:単位[dBμV/m]

放射電界強度 限度値 10m法 30

230MHz
304030405030403040504050
230MHz

1GHz
374737475037473747504750
30m法 30

230MHz
30
230MHz

1GHz
37

(2011年11月現在)

:用語説明資料に記載あり

図 5.14.1 雑音端子電圧限度値グラフ
図 5.14.2 放射電界強度限度値グラフ

(15)EMC試験関連の用語

EUT

Equipment Under Test:試験状態にさらされる機器で、被試験機器または供試機器のことです。

イミュニティ試験

EUTの電磁妨害に対する耐性を評価する試験です。

エミッション試験

EUTから放射される電磁妨害の強度が限度値を超えないかどうかを評価する試験です。

オープンサイト

EMC計測などに使用する、屋外に設けられた実験設備をいいます。

電波暗室

電磁的に隔離された環境を作り出すために用いられる設備で、内部は電波反射防止処理がほどこされています。

CISPR

IECの特別委員会で、無線障害の原因となる妨害波に関し、許容値と測定法などの規格を統一する目的で設立され、EMC(Electoro Magnetic Compatibility)電磁環境両立性の規格作成委員会があります。

EN55011のグループ1、グループ2

グループ1 :
研究所、医療、および科学用機器(例…周波数カウンタ、スペクトラム・アナライザ、スイッチング電源、計量器など)
グループ2 :
工業用誘導加熱装置、誘電加熱装置、工業用マイクロウェーブ加熱装置、家庭用電子レンジ、医療機器、スパーク侵食装置、およびスポット・ウェルダ。

ISM 装置

Industrial, Scientific and Medical radio-frequency equipment : 工業、科学、及び医療用無線周波装置のことです。

LISN

Line Impedance Stabilization Network:電源インピーダンス安定化回路網

EUTから電源を見たインピーダンスを管理しながら、ノイズの成分を測定器に伝える装置です。AMN(Artificial Mains Network:疑似電源回路網)とも呼ばれます。



ノイズフィルタについて

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